筑陽学園の文化行事のひとつ、芸術鑑賞。毎年、演劇や音楽など、様々な芸術に触れる機会となっています。今年は、津軽三味線、和太鼓、尺八のコラボレーションのステージで、和楽器と和の音色を楽しむひと時となりました。
津軽三味線奏者は、「吉田兄弟」という兄弟ユニットで知られる吉田良一郎さん(兄)です。今回の芸術鑑賞の見所のひとつに、「ふれあいコーナー」がありました。これは、実際に和楽器に触れてもらいたいという吉田良一郎さんの思いで設けられたコーナーです。そのコーナーに参加してくれた中の1人、中高一貫1年生の米良まき子さんに話を聞きました。米良さんは、小学校1年生のときに三味線を始め、今も続けています。
米良 まき子 中高一貫 1年(筑陽学園中)
テレビでよく見ていて、かっこいいと思っていたんですけど、間近で見たら、またかっこよくて、緊張しましたけど、いい思い出になりました。津軽三味線という日本のものなのに、吉田さんは、洋楽とコラボレーションをしたり、日本の曲以外の曲を演奏していたりして、すごいなと思っていました。私は、おばあちゃんが、日本舞踊をしているので、小さい頃から良く聞いていたということもあるのかもしれませんが、日本の曲って、音程とか、曲調などが独特なので好きなんです。なので、津軽三味線にも、これから挑戦したいです。琴や尺八もやってみたいですね。
三味線ってすごいなと思いました。ステージに出てきたときに、みんなが歓声を上げてくれたのがうれしかったし、三味線には、それほどの魅力がるんだなって。今回、吉田良一郎さんと一緒に演奏できて、三味線をずっと続けて行こうと思いました。将来は、仕事をしながらボランティアのような形で、三味線を弾いていきたいと思っています。
【津軽三味線】 | 吉田良一郎(よしだ・りょういちろう) | 公式サイトはコチラから |
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【和太鼓】 | 美鵬直三郎(びほう・なおさぶろ) | 公式サイトはこちらから |
【尺 八】 | 元永 拓(もとなが・ひろむ) | 公式サイトはこちらから |
福岡サンパレスの会場いっぱいに響く、生徒たちの拍手で始まった津軽三味線奏者 吉田良一郎さんのライブ。普段、触れる事の少ない和楽器のコラボレーションのステージです。吉田良一郎さんは、吉田兄弟というユニットでデビューし、ドラマやCMなどでも、その楽曲は数多く使われています。
芸術鑑賞のステージを終えた吉田良一郎さんに、お話を伺いました。
Q.とても素敵なライブ。ありがとうございました。
筑陽学園の生徒(中高生)の前での演奏はいかがでしたか?
今回のライブは、「日本の心 和の響き」というタイトルです。僕の津軽三味線と太鼓、尺八、との和楽器だけのコラボレーション。この3つの楽器で、ほぼ和の音色を楽しめるベストメンバーじゃないかなと思ったんです。普段のライブでは、洋楽器も加わってきますが、今回は、純粋に和を楽しんでもらいたかったんです。 最初に、生徒の皆さんの拍手で始まって、学校ならではの雰囲気でしたね。シ〜ンとしているよりは、盛り上がったほうがいいなと思っているし。期待してもらっているんだなと思えて、うれしかったですね。もっと騒いだりするのかなとも思ってたんですけど、真剣に聞いてくれていて、ちゃんと拍手もあって、和の楽器にも興味があるんだなって感じました。
Q.今年は、学校公演という企画をソロでなさっていますが、どういうきっかけで始められたんですか?
1999年に、弟と一緒に「吉田兄弟」としてデビューしたんですが、それは、もともと、2001年から始まった学校教育で、和の授業を取り入れるという選択授業があって、それで、学校の生徒のために僕たちはデビューしたんですよ。最初のうちは、学校公演もやっていたんですけど、デビューして人気が出て、普通のコンサートばかりになってしまったんです。それは、とてもうれしい事なんですけど、当初の目的を果たせなくなってしまって。来年は、デビュー10年という事もあって、今年は、弟と僕は、それぞれソロで活動しています。その中で、僕は、この学校公演という活動を始めました。若いうちに、学生の皆さんと近い世代で、津軽三味線を「伝えて行きたい」そして、和の音に「触れて欲しい」というのが、僕の願いなんです。聞くだけでなくて、触れて欲しいんです。
今回の公演で触れ合いコーナーに参加してくれた生徒さんが、「いい体験ができた。」って言ってくれていましたけど、そういう声を聞きたいんです。やっぱり、体験しないと分からない事って、たくさんあると思うんですよ。三味線が重いとか、難しいとか、音が、なかなか出ないとか。そういうことを、とにかく体で感じて欲しいんです。
Q.津軽三味線は、他の弦楽器に比べると、とても力強い音をだしますよね?
津軽三味線は、青森の文化の中で発達した独自な三味線です。弦楽器でありながら、あれだけ強く叩く弦楽器は、世界でも類をみないと思いますね。まして、あの大きなバチですから。アメリカやヨーロッパに行くと、本当にびっくりしますよ。「ビッグ ピックだ!」って(笑)ギターは小さなピックでしょ?
津軽三味線のバチは、琵琶からきてるんですよ。琵琶は、あのものすごく大きなバチを使ってますよね。それで動きの速い演奏をするようになって、北に上がるに連れて津軽三味線の形になったんですよ。
ただ、日本の楽器でありながら、なかなか触れられない。それは例えば、伝統という感じになっていて、格式が高いような感じを受けているのかもしれませんが、ほんとは、そんなことはないんです。民謡は、もともとは、時代時代の流行歌ですし、津軽三味線は120年くらいの歴史しか持っていない楽器で、三味線の中では一番新しいジャンルなんです。まだまだ、発展してるんですよ。
Q.古典のイメージが強かったですが、お話を伺っていると、津軽三味線や民謡を身近に感じられます。「津軽じょんがら節」は、以前、聞いた事があるものと違った感じがしたのですが、アレンジをなさっているんですか?
実は、譜面が無いんです。津軽三味線は、とても自由なんですよ。普通は、譜面が決まっているんです。例えば、今日、演奏した「九州炭坑節」なども譜面があって形が決まっています。でも、津軽三味線は決まっていないんです。題名だけがあるだけなんです。「津軽じょんがら節」も、こんなフレーズで、こんなリズムで、じょんがら節というだけで、譜面はないんです。だから、100人いれば100通りのじょんがら節があるんです。自分なりに作れる、その自由性が面白いんです。
海外でツアーをしていると、海外のお客さんの反応って、すごいですよ。どっかんどっかんですよ、特にアメリカは。アメリカはジャズの国なんですね。実は、津軽三味線はジャズだと言われているんですよ。このアドリブ性や自由性が。あるテーマは決まっていて、中身は遊びがあるというのは、ジャズとそっくりなんですよ。だから、演奏中も観客の皆さんの反応は大きいです。ヨーロッパではクラシックと捉えられているので、曲中とても静かで、終わってからの反響がすごいですね。
Q.吉田さんが感じている津軽三味線の魅力とは、どういうところですか?
和の音色は僕たち日本人にしかできないんですよ。海外に行って特に感じるんですけど、僕たちが当たり前のように弾いているフレーズも、海外の人から見ると、とっても不思議で、どうやってるの?って感じなんです。ということは、それは日本人ならではという事なんです。“これは誇れるな!“と僕は思っています。だって、他には類がないじゃないですか。すぐに日本人は真似するところに行ってしまいますが、日本人ならではのフレーズというところが、武器だと思っていますし、そこが、小さい頃からやっていても、津軽三味線をかっこいいなと思うところです。
Q.来年は、デビュー10周年だそうですが、どんな一年になりそうですか?
来年は、吉田兄弟として2人でツアーをします。デビューして以来、ある意味、僕の名前が一人歩きして、僕の先を行ってましたけど、やっと、ここ1、2年、追いついたかなという感じです。自信を持って、ツアーを回れる気がしています。そして、津軽三味線の可能性をお見せできる気がします。自分にとっても楽しみですね。和太鼓あり、尺八あり、キーボードありと、いろんな感じで、たくさんの楽器とセッションするんですけど、そうすると、良さがもっと伝わるんですよね。三味線だけもいいけど、セッションもいいね。っていう、可能性、引き出しを、いっぱい見せられるツアーになると思います。
最後に、筑陽学園の生徒にメッセージをお願いします
僕は、5歳から津軽三味線を続けてきたからこそ、今があるし、皆さんの前で演奏できるようになったと思うんです。
続ける大切さというんでしょうか。辞めるのは簡単だと思うんですよ。何か理由を付ければやめられますから。ただ、続ける理由を見つけて欲しい、探して欲しいなと思います。あとは、努力だと思います。それもただ努力するのではなく、努力する楽しさを知って欲しいと思います。
僕がやめずにここまで続けてこられたのは、目標を持っていたからだと思います。大会で賞を取るとか、CDデビューしたいという目標があったから、ここまで来れたと思います。何でもいいんだと思うんで、目標を持って努力すれば、いつか自分に返ってくると思いますよ。
編集後記
吉田良一郎さんのお話を伺っていて、津軽三味線の歴史や民謡の成り立ち、海外から見た和の音色を考えると、私たち日本人に根付く感性の素晴らしさを感じずにいられません。普段、触れることの少ない和楽器と演奏ですが、この芸術鑑賞を通して、日本の芸能文化の良さを感じ、もっと知りたいと考えるきっかけになったのではないでしょうか。